※今回は写真は記事の内容と無関係です

前回の記事で紹介した「関係人口セミナー」の、
後半は首都圏からの参加者のみなさんと
天栄村、特に湯本地区の人たちと共同のワークショップでした。

そこでわたしが、参加者のある方から言われた
衝撃的な言葉をご紹介したいと思います。
その言葉によって、わたしの考えが一気に開かれたと同時に、
現在も続く自問自答が始まりました。

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ワークショップでは、参加者がいくつかのグループに分かれ、
①村のいいところ ②村の困っているところ ③自分が村に関わりたいこと
といった3点について、意見を出していきました。

まず「村のいいところ」ですが、
湯本の場合は温泉があったり自然があったり、
住民同士の助け合い、治安のよさ、食料自給など、
たくさん挙がりました。

そして問題だったのは「村の困っているところ」です。
わたしの横に座っていた東京からの参加者の男性が、
「村の人って、何か困っていることあるんですか?」
と言ったのです。

聞いた瞬間、わたしも「この人は何を言ってるんだろう」と
思ったのですが、その方は続けます。
「食べ物は自分で作っている、環境はいい、治安もいい。
それで困っているって、よくわからないんですけど」

それを聞いて、わたしはカミナリに打たれたような衝撃を受けました。

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確かにそうなんですよ。
生きるうえで必要なものはそろっています。
食料、燃料、水はある。
治安はいい。
子育てしやすい。
仕事だって通える範囲でたくさんある。

もちろんわたしも移住してきたとき、
そうした良さに気づいて定住を決めたわけですが、
なんとなく「地域は困っている」と思っていました。

でも実際に暮らしていて困ることってあまりない。
ないどころか、都会に比べたら
泥棒や不審者の心配はないし、
大災害や戦争が起きたって絶対に飢え死にしないし、
子育て・教育環境だって断然優れているし…
はっきり言って、地域は都会に比べてかなり「恵まれてる」のですよ。

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でも、世間的にも「地域は困っている」っていう
イメージですよね。
わたしも「地域を何とかしなきゃ」と思って
ずっといろいろ活動をしてきたわけで…
ただ、冷静に考えると、「何」に困っているか、
ということを深く考えてこなかったのかもしれない。

その男性の発言を聞いて、それに気づいたのです。

もちろん、個人個人はさまざまな悩みを抱えて暮らしています。
ただそれは地域も都会も同じです。

地域特有の問題、と考えると、
車を持っていない人は買い物が不便だったりとか、
一人暮らしのお年寄りは雪かきが大変だったりとか、
そういうことはあります。

でもそれもご近所や親せきの人たちが手助けしたりして、
いまのところなんとかなっています。
今後も、例えばネットを利用できる人が
買い物を手助けするなど、新しい解決策も考えられます。

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ではこの「なんとなく困っている」感覚の正体は何なのか。

よくよく考えていくと、おそらく、
「いまのこの困っていない暮らし、恵まれた暮らしが
人口減少によって失われるかもしれないという不安」
ということに集約できるのではないかと思うようになりました。

農業や治安維持に重要な住民同士の助け合いも、
隣近所がいなくなってはできません。
住民がいなくなれば、公共施設や行政サービスも削減されます。

つまり、「人口減少」こそがこの漠然とした不安感の源であり、
もっとも対策を講じないといけないことなのだと思うのです。

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こう思ったとき、かなり自分の考えが整理できました。

都市に比べて出生率の高い、地域での人口減少は、
国全体の少子化のように自然減で起きるのではなく、
都市への人口流出によって起きています。

この人口流出の原因は、
地域が「恵まれている」にも関わらず起きていることから、
合理的に説明するのが難しく、
地域自体に問題があることよりも、
単に住民の「都会への憧れ」が
原因の大部分を占めていると思われます。

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自分の考え方が他人の意見によって180度変わることなど
滅多にないことを考えれば明らかなように、
他人の趣向、志向を変えることは困難です。

都会志向の地域住民が地域の魅力を再認識して
また村に戻ってくることは、
よほどのことがない限り難しいでしょう。
(身近な知人で震災をきっかけに湯本の良さに目覚めた、
という人はいますけど、やはりとても希な例です)

それよりも大事なことは、
いま地域に暮らしている人たちに感謝し、大事にすることと、
湯本の「恵まれた暮らし」を理解した上で、
住みたいと言ってくれる仲間を作ること。
この2点なのだなと。

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この中でわたしができることというのは、
湯本での「恵まれた日常」をこれまで以上に発信すること。

「仕事、なりわいを創出しないと」とか、
これまで少し自分の能力以上のことを、
できもしないのにやろうとしていたと思います。

少し原点に立ち返って、湯本のふつうの暮らしが
いかに恵まれているかを、自分を媒体として、
地域に暮らしている人たちや、
田舎暮らしに関心を持つ人たちに伝えること。
このあたりに集中していこうかと思いました。

とは言いつつ、
ほかにもこまごまとしたアイデアはあるんですけどね。
やれる範囲で、コツコツと進めたいと思います。

つづく